刀身を見るときには、樋(ひ)や彫り物を見ることでも楽しめます。刀工の癖や宗教観などが読み取れることもあり、鑑賞をする上で外せない部分になっていると言われています。まず樋(ひ)については、刀身の鎬地に彫られている溝の部分を指します。なぜわざわざ溝を作っているのかというと、理由は大きく分けて四つあります。一つは、単純に溝をつくることで重量を軽くすることです。戦場において、余計な重みがある刀を振るうことは負担になる」こともあります。二つ目は、力が加わる方向を吸収するという役割を持つだめです。H型の鋼と同じ原理で、溝を作っておくことで刃筋方向に加わる力を吸収することができて、刀身を曲がりづらくすることができます。三つ目は、血を流すためです。樋は、「血流し」と呼ばれることもあります。人を切ったときに付着した血が、この溝を伝って流れていく役割を持っています。四つ目は、傷を隠すためです。刀にできた傷を、敢えて樋を施すことで隠す役割です。樋の幅や深さなど、単純な溝ではありますが、刀工の癖が現れる部分とも言われています。樋には、大きく分けて5種類あると言われています。太い溝を一本彫っている棒樋(ぼうひ)。棒樋の横に、さらに細い溝を一本添えている添樋(そえび)。棒樋に沿った細い樋の先端が、棟側まで彫られている連樋(つれび)。連樋は、添樋の一種と言われています。細い溝を二本、平行にしながら刻んでいる二筋樋(ふたすじひ)。刀の腰付近から刀身の中央付近まで彫っているものを腰樋(こしひ)と言います。刀を振るうと風を切る音がしますが、それはこの樋があるためと言われています。そのため音がでないよう夜戦では使わなかったとも言われているそうです。