「武者修行」という言葉は、現代でも良く耳にする言葉であるのではないでしょうか。この言葉はもともと、武士が日本諸国を巡りながら、武芸や知識、精神を鍛えるという修行のことを指していたとされています。しかし、現代ではどうでしょう。多くは、出生地を離れ、大都市などで技術を身につけたり、学んだりということ全般に対して使われているのではないでしょうか。武者修行が初めて行われたのは、はるか戦国時代と言われており、室町幕府将軍であった足利義輝が、三好長慶討伐のために畿内の武者修行者を募った際、日本諸国より膨大な数の修行者が押し寄せたという逸話から、当時はかなりの数の修行者がいたことがわかるでしょう。「武者修行」という言葉には、真面目でストイックというイメージがあるようですが、当時はそのような人ばかりではなく、戦国の乱世であった当時、豪族の激しい栄枯盛衰により、諸国に溢れる浪人の数は相当数であったとされているようで、その一方、諸国では武勇の士を求める声も相当数であったとされるため、再就職口には困らなかった時代でもあるようです。しかし、就職口には困らないとはいえ、その待遇の差は歴然であったようで、完全に実力主義であったことがうかがえるようです。そのため、修行者たちは少しでも自分を売りこむため、派手な衣装を纏ったり、「日本一」と書いたたすきをかけて諸国を回ったりしていたと言われています。有名な剣豪であったとしても、より自身を稀有の武芸者として印象づけるために、一族や門弟を引き連れて諸国を練り歩いたりするなどという姿が見られていたとされています。このように、当時の「武者修行」というものは、武芸者が自身の技術を向上しながらも、より良い就職先を見つけるための就活の一種であったとされているようです。